令和6年度報酬改定 ~居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護の報酬改定~

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障害福祉サービス事業は、毎年の小改定と3年に一度の大改定があり、令和6年度はその大改定の年でした。

令和5年度までとは大きな変更があったサービスと、あまり変化がなかったサービスがあります。

今回の報酬改定で、居宅介護等の訪問系サービスが、どのように改定されたのか気になるところですね。

それでは、順番に確認していきましょう。

 

➡ 令和6年度報酬改定(厚労省)

 

目次

令和6年度報酬改定 訪問系サービスの報酬改定情報

居宅介護

基本報酬

居宅介護の基本報酬は、全区分で増加となっています。

居宅における身体介護が中心である場合

所要時間 改定後(R6.4.1~) 現行(~R6.3.31)
30分未満 256単位 255単位
30分以上 1時間未満 404単位 402単位
1時間以上 1時間30分未満 587単位 584単位
1時間30分以上 2時間未満 669単位 666単位
2時間以上 2時間30分未満 754単位 750単位
2時間30分以上 3時間未満 837単位 833単位
3時間以上 921単位に30分を増すごとに +83単位 916単位に30分を増すごとに +83単位

 

通院等介助(身体介護を伴う場合)が中心である場合

所要時間 改定後(R6.3.31~) 現行(~R6.3.31)
30分未満 256単位 255単位
30分以上 1時間未満 404単位 402単位
1時間以上 1時間30分未満 587単位 584単位
1時間30分以上 2時間未満 669単位 666単位
2時間以上 2時間30分未満 754単位 750単位
2時間30分以上 3時間未満 837単位 833単位
3時間以上 921単位に30分を増すごとに +83単位 916単位に30分を増すごとに +83単位

 

家事援助が中心である場合

所要時間 改定後(R6.4.1~) 現行(~R6.3.31)
30分未満 106単位 105単位
30分以上 45分未満 153単位 152単位
45分以上 1時間未満 197単位 196単位
1時間以上 1時間15分未満 239単位 238単位
1時間15分以上 1時間30分未満 275単位 274単位
1時間30分以上 311単位に15分を増すごとに +35単位 309単位に15分を増すごとに +35単位

 

通院等介助(身体介護を伴わない場合)が中心の場合

所要時間 改定後(R6.4.1~) 現行(~R6.3.31)
30分未満 106単位 105単位
30分以上 1時間未満 197単位 196単位
1時間以上 1時間30分未満 275単位 274単位
1時間30分以上 345単位に30分を増すごとに +69単位 343単位に30分を増すごとに +69単位

 

通院等のための乗車または公社の解除が中心である場合

改定後(R6.4.1~) 現行(~R6.3.31)
102単位 101単位

 

居宅介護の特定事業所加算の加算要件の見直し

  • 特定事業所加算の算定にあたり、専門的な支援技術を必要とする重度障害児への支援が評価できるように、加算要件の「重度障害者への対応」、「中度障害者への対応」の中に、「重度障害児(重症心身障害児、医療的ケ)への対応」が追加されました。
特定事業所加算(Ⅰ) ①~③の全てに適合 所定単位数の20%を加算
特定事業所加算(Ⅱ) ①及び②に適合 所定単位数の10%を加算
特定事業所加算(Ⅲ) ①及び③に適合 所定単位数の10%を加算
特定事業所加算(Ⅳ) ①及び④に適合 所定単位数の5%を加算

特定事業所加算 改定後の算定要件

① サービス提供体制の整備(研修の計画的実施、情報の的確な伝達等)

② 良質な人材の確保(介護福祉士の割合が30%以上等)

③ 重度障害者への対応(区分5以である者、喀痰吸引等を必要とする者並びに重症心身障害児及び医療的ケア児の占める割合が30%以上)

④ 中重度障害者への対応(区分4以上である者、喀痰吸引等を必要とする者並びに重症心身障害児及び医療的ケア児の占める割合が50%以上)

※ 令和6年3月31日時点で、特定事業所加算加算を受けている事業所については、3年間の経過措置を設ける。

 

サービス提供責任者についての暫定措置の廃止

  • 居宅介護のサービス提供責任者については、「居宅介護職員初任者研修課程修了者 で 3年以上介護等の業務に従事した者」をサービス提供責任者とする暫定措置が設けられていましたが、質の向上を図る観点から廃止されました。
  • これに合わせて、上記暫定措置によりサービス提供責任者を配置していた場合、所定単位数を30%減算する規定も廃止されます。

 

通院等介助等の対象要件の見直し

  • 居宅介護の通院等介助等について、居宅が始点または終点となる場合には、障がい福祉サービスの通所系の事業所や、地域活動支援センター等から目的地(病院等)への移動等にかかる通院等介助等に関しても、同一事業所が行うことを条件に支援の対象となります。

(厚労省HPより引用)

 

重度訪問介護

基本報酬

重度訪問介護の基本報酬も、全区分増加しております。

病院等に入院または入所中以外の場合

所要時間 改定後(R6.4.1~) 現行(~R6.3.31)
1時間未満 186単位 185単位
1時間以上 1時間30分未満 277単位 275単位
1時間30分以上 2時間未満 369単位 367単位
2時間以上 2時間30分未満 461単位 458単位
2時間30分以上 3時間未満 553単位 550単位
3時間以上 3時間30分未満 644単位 640単位
3時間30分以上 4時間未満 736単位 732単位
4時間以上 8時間未満 821単位に、4時間から30分ごとに +85単位 817単位に、4時間から30分ごとに +85単位
8時間以上 12時間未満 1505単位に、8時間から30分ごとに +85単位 1497単位に、8時間から30分ごとに +85単位
12時間以上 16時間未満 2184単位に、12時間から30分ごとに +81単位 2172単位に、12時間から30分ごとに +80単位
16時間以上 20時間未満 2834単位に、16時間から30分ごとに +86単位 2818単位に、16時間から30分ごとに +86単位
20時間以上 24時間未満 3520単位に、20時間から30分ごとに +80単位 3500単位に、20時間から30分ごとに +80単位

 

病院等に入院または入所中の場合

所要時間 改定後(R6.4.1~) 現行(~R6.3.31)
1時間未満 186単位 185単位
1時間以上1時間30分未満 277単位 275単位
1時間30分以上2時間未満 369単位 367単位
2時間以上2時間30分未満 461単位 458単位
2時間30分以上3時間未満 553単位 550単位
3時間以上3時間30分未満 644単位 640単位
3時間30分以上4時間未満 736単位 732単位
4時間以上8時間未満 821単位に、4時間から30分ごとに +85単位 817単位に、4時間から30分ごとに +85単位
8時間以上12時間未満 1505単位に、8時間から30分ごとに +85単位 1497単位に、8時間から30分ごとに +85単位
12時間以上16時間未満 2184単位に、12時間から30分ごとに +81単位 2172単位に、12時間から30分ごとに +80単位
16時間以上20時間未満 2834単位に、16時間から30分ごとに +86単位 2818単位に、16時間から30分ごとに +86単位
20時間以上24時間未満 3520単位に、20時間から30分ごとに +80単位 3500単位に、20時間から30分ごとに +80単位

 

入院中の重度訪問介護利用の対象拡大

  • 入院中に特別なコミュニケーション支援を行うための重度訪問介護の利用について特別なコミュニケーション支援を必要とする障害支援区分が、現行では障害支援区分6のみでしたが、改定により拡大されます。

【改定後の対象者】

  • 障がい支援区分 4・5・6の障がい者

 

入院時支援連携加算【新設】 300単位/回 ※1回を限度

病院等に入院する前から重度訪問介護を受けていた利用者が、入院するに当たり、重度訪問介護事業所の職員が当該病院等を訪問し、当該利用者にかかる必要な情報の提供及び当該病院等と事業所が連携して入院時の支援を行うための必要な調整を行った場合1回を限度として所定単位数を加算することができます。

 

熟練中業者による同行支援の見直し

  • 重度訪問介護における熟練従業者の同行支援をより評価する観点から、熟練従業者及び新任従業者の報酬について見直しが行われました。
  • 医療的ケア等の専門的な支援技術が必要な重度訪問介護加算対象者(15%加算対象者)に対する支援について、採用から6ヶ月以内の新任従業者に限らず、重度訪問介護加算対象者(15%加算対象者)に対する支援に初めて従事する従業者も、熟練従業者の同行支援の対象とされることになりました。
  • それぞれの従業者が行う重度訪問介護につき、所要時間120時間以内に限り、90%(現行は85%)に相当する単位数を算定することができます。

 

同行援護

基本報酬

同行援護の基本報酬についても、全ての区分で増加しています。

所要時間 改定後(R6.4.1~) 現行(~R6.3.31)
30分未満 191単位 190単位
30分以上 1時間未満 302単位 300単位
1時間以上 1時間30分未満 436単位 433単位
1時間30分以上 2時間未満 501単位 498単位
2時間以上 2時間30分未満 566単位 563単位
2時間30分未満 3時間未満 632単位 628単位
3時間以上 697単位に30分ごとに +66単位 693単位に30分ごとに +65単位

 

同行援護の特定事業所加算の加算要件の見直し

  • 専門的な支援技術を有する人材を配置した事業所を評価できるように、加算要件の「良質な人材の確保」の要件の選択肢として、「盲ろう者向け通訳・介助員であり、同行援護従業者の要件を満たしている者」の配置割合が追加されました。
特定事業所加算(Ⅰ) ①~③の全てに適合 所定単位数の20%を加算
特定事業所加算(Ⅱ) 及びに適合 所定単位数の10%を加算
特定事業所加算(Ⅲ) 及びに適合 所定単位数の10%を加算
特定事業所加算(Ⅳ) 及びに適合 所定単位数の5%を加算

特定事業所加算 改定後の算定要件

 サービス提供体制の整備(研修の計画的実施、情報の的確な伝達等)

 良質な人材の確保
・介護福祉士の割合が 30%以上
・実務者研修修了者や介護職員基礎研修課程修了者等の割合が 40%以上
・常勤の同行援護従事者によるサービス提供 40%以上
・同行援護従事者養成研修及び国立リハビリテーションセンター学院視覚障害学科修了者等 30%以上
・盲ろう者向け通訳・介助員で、同行援護従業者の要件を満たしている者 20%以上

 重度障害者への対応(区分5以である者、喀痰吸引等を必要とする者並びに重症心身障害児及び医療的ケア児の占める割合が30%以上)

 中重度障害者への対応(区分4以上である者、喀痰吸引等を必要とする者並びに重症心身障害児及び医療的ケア児の占める割合が50%以上)

 

行動援護

基本報酬

行動援護は、強度行動障害を有する者のニーズに応じた専門的な支援を行うようにするため、短時間の支援の評価が行われ、長時間の支援について見直しが行われました。

3時間未満までの支援は単位がUPし、3時間30分以上の支援についてはDOWNしています。

所要時間 改定後(R6.4.1~) 現行(~R6.3.31)
30分未満 288単位 258単位
30分以上 1時間未満 437単位 407単位
1時間以上 1時間30分未満 619単位 592単位
1時間30分以上 2時間未満 762単位 741単位
2時間以上 2時間30分未満 905単位 891単位
2時間30分以上 3時間未満 1047単位 1040単位
3時間以上 3時間30分未満 1191単位 1191単位
3時間30分以上 4時間未満 1334単位 1340単位
4時間以上 4時間30分未満 1479単位 1491単位
4時間30分以上 5時間未満 1623単位 1641単位
5時間以上 5時間30分未満 1764単位 1791単位
5時間30分以上 6時間未満 1904単位 1940単位
6時間以上 6時間30分未満 2046単位 2091単位
6時間30分以上 7時間未満 2192単位 2240単位
7時間以上 7時間30分未満 2340単位 2391単位
7時間30分以上 2485単位 2540単位

 

行動援護の特定事業所加算の加算要件の見直し

  • 加算要件の「サービスの提供体制の整備」に、強度行動障害を有する者に対して医療・教育等の関係機関との連携に関する要件が追加されました。
  • 加算要件の「良質な人材の確保」の要件の選択肢として、「中核的人材養成研修を修了したサービス提供責任者の人数」が追加されました。
  • 加算要件の「重度障害者への対応」の選択肢として、特に専門的な支援技術を必要とする「行動関連項目18点以上の者」が追加されました。

 

行動援護のサービス提供責任者等の要件に係る経過措置の延長

  • 行動援護のサービス提供責任者及び従業者の要件における、「介護福祉士や実務者研修修了者等を行動援護従業者養成研修修了者とみなす」という経過措置が、令和9年3月31日まで延長し、その後廃止することが決定されました。

 

訪問系サービスの国庫負担基準の見直し

  1. 居宅介護の国庫負担基準に、介護保険対象者の区分が追加されます。
  2. 重度訪問介護の国庫負担基準に、重度障害者の単位の見直しや介護保険対象者の区分の細分化が行われました。

(厚労省HPより引用)

 

他サービス共通の改定事項(訪問系サービス関連項目抜粋)

福祉・介護職員処遇改善加算

  • 令和5年度までは処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算に分かれていましたが、現行の各加算・各区分の要件及び加算率を組み合わせた4段階の「福祉・介護職員処遇改善加算」に令和6年6月から1本化するとともに加算率が引き上げられます。
  • 新加算(Ⅳ)が基礎となり、その加算額の1/2以上を月額賃金の改善(ベースアップ)に充てることが要件となっています。
サービス区分 福祉・介護職員処遇改善
居宅介護 41.7% 40.2% 34.7% 27.3%
重度訪問介護 34.3% 32.8% 27.3% 21.9%
同行援護 41.7% 40.2% 34.7% 27.3%
行動援護 38.2% 36.7% 31.2% 24.8%

 

障がい者の意思決定の推進

  • 相談支援専門員やサービス提供責任者が行う「サービス担当者会議」「個別支援会議」について、利用者本人が参加するものとし、当該利用者の生活に対する意向等を改めて確認することとなりました。

同性介助

  • 本人の意思に反する異性介助がなされないよう、サービス提供責任者がサービス提供に関する本人の意向を把握するとともに、本人の意向を踏まえたサービス提供体制の確保に努めることになりました。

障がい者虐待防止の推進

虐待防止措置未実施減算【新設】

令和4年度から義務化された障がい者虐待防止措置を未実施の障がい福祉サービス事業所等に対して、所定単位数を1%減算することとなりました。

以下の1~3が1つでも出来ていなければ減算となります。

  1. 虐待防止委員会を定期的に開催するとともにその結果について職員に周知徹底を図る
  2. 職員に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施する
  3. 上記措置を適切に実施するための担当者を置く

その他、虐待防止委員会(身体拘束適正化委員会を含む)において、外部の第三者や専門家の活用に努めることや、都道府県の実施する虐待防止研修を管理者および虐待防止責任者が受講することが望ましいとされています。

身体拘束等の適正化の推進

身体拘束等の適正化の徹底を図る観点から、減算額が引き上げられました。

現行では、基準を満たしていない場合に、1日につき5単位を基本報酬から減算することとなっていましたが、改定後は基準を満たしていない場合に所定単位数の1%を減算することとなりました。

 

➡ 虐待防止・身体拘束適正化について ~令和6年度報酬改定対応~

 

個別支援計画の共有

  • 個別支援計画を指定特定(障害児)相談支援事業所にも交付することが義務付けられました。

人員基準における両立支援への配慮

現行では、「育児・介護休業法等」による短時間勤務制度を利用する場合、週30時間以上の勤務でも、常勤として取り扱うことができましたが、これに加え、「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業所が設ける短時間勤務制度を利用する場合にも、週30時間以上の勤務で「常勤」として取り扱うことが認められます。

管理者の働き方について

  • 一定の条件を満たした場合、管理者は同一敷地内等に限らず、同一事業者によって設置される他の事業所等の管理者または従業者として勤務できるようになります。
  • 管理者のテレワークについての取り扱いが示され、一定の条件を満たした場合テレワークが可能となります。

業務継続計画未作成減算【新設】

  • 以下の基準を満たしていない場合は、所定単位数を減算する「業務継続計画未作成減算」が新設されました。
  • 訪問系サービスは、所定単位数を1%減算となります。
  • 訪問系サービスは、令和7年3月31日まで経過措置となります。
  1. 感染症や非常災害の発生時において、利用者に対するサービス提供を継続的に実施するため及び早期の業務再開を図るための計画(業務継続計画)を策定する
  2. 業務継続計画に従い必要な措置を講じる

情報公表未報告減算【新設】

障害者総合支援法第76条の3の規定に基づく情報公表にかかる報告がされていない場合、所定単位数を減算する規定が新設されました。

訪問系サービスは、所定単位数の5%を減算することとなります。

また、都道府県(指定権者)は、指定の更新申請があった場合、申請事業者が情報公表を行っているか確認することとなりました。

WAM NETへの公表ができていない事業所様は忘れずにご対応ください。

 

その他令和6年4月から義務化される事項

感染症対策の強化にかかる取組み

  • 感染対策委員会の設置と委員会の定期開催
  • 委員会での検討結果を全従業員に周知徹底すること
  • 指針の整備
  • 定期的な研修・訓練の実施

➡ 感染対策委員会について詳しく

 

感染症・非常災害発生時の業務継続に向けた取組の強化

  • BCP計画(新型コロナ・非常災害)の策定と周知
  • 研修及び訓練の定期的な実施
  • BCP計画の定期的な見直しと必要に応じた計画の変更

 

まとめ

以上が、訪問系サービスの令和6年度報酬改定の概要になります。

行動援護の長時間のサービス提供以外は、全体的に単価の引き上げとなりました。

 

当事務所では、事業所様の適正運営のために、書類点検、制度研修、委員会設置サポート、顧問契約を行っております。

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