障害福祉サービス事業は、毎年の小改定と3年に一度の大改定があり、令和6年度はその大改定にあたる年でした。
就労継続支援A型事業所にとっては、厳しい改定内容となっております。
それでは、順番に内容を確認していきましょう。
令和6年度 就労継続支援A型の法主改定情報
基本報酬についての改定情報
スコア方式による評価項目の見直し
経営状況の改善や一般就労への移行等を促すために、スコア方式による評価項目を次のように見直されました。
- 労働時間の評価 ➡ 平均労働時間が長い事業所の点数を高く設定する。
- 生産活動の評価 ➡ 生産活動収支が賃金総額を上回った場合には加点、下回った場合には減点
- 「生産活動」のスコア項目の点数配分を高くし、各評価項目の得点配分も見直し
- 「利用者知識及び能力向上」の取組みについて、評価項目を新設
- 「改善計画書未提出の事業所」「数年連続で経営改善計画書を提出している事業所」に減点評価を新設
(厚労省HPより)
スコア全体の改定点は上記の通りです。
それぞれどのように変わったのか、一つずつ見ていきましょう。
労働時間
(厚労省HPより)
「2時間未満」から「4時間以上4時間30分未満」の区分は変わらず、「4時間30分以上5時間未満」から「7時間以上」の区分は、それぞれ10点ずつ上がっており、この評価指標に関しては嬉しい見直しとなっています。
生産活動
(厚労省HPより引用)
現行では、生産活動収支の状況について4段階で評価されていうんましたが、改定により6段階の評価となり、注目すべき点は、以下の3点です。
- 「前年度」「前々年度」「前々々年度」の生産活動収支が、利用者に支払う賃金総額以上であれば評価されるようになり、評価点数が高い。
- 生産活動収支が、利用者に支払う賃金総額以上だと、評価点数が上がった。
- 連続で生産活動収支がマイナスの場合、-10点~-20点という評価になった。
製造業などを営んでいる法人が母体であったり、他事業経営をされており、安定的に利用者に高水準の仕事を提供できる環境等でない限り、なかなか厳しい事業所様が多いのではないでしょうか。
何としてでも3年連続生産活動収支がマイナスとなることを避けるために、高単価の仕事の受注や事業所全体の意識改革等、新たな方策が求められます。
多様な働き方
(厚労省HPより引用)
多様な働き方の評価指標に関しては、現行では 「規程があること」と「実績があること」の2段階で評価されていましたが、改定後は実績があることについての評価がなくなり、「規程があること」のみが評価されることとなりました。
それに伴い、判定スコアの評価点数が 最高35点から、最高15点に引き下げられました。
支援力向上
(厚労省HPより引用)
詳細が出ていないので、何とも言えないところもありますが、最高点が35点から15点に引き下げられ、最低点については15点から0点になりました。
地域連携活動
(厚労省HPより引用)
地域連携活動に関しては、変更はされておりません。
沢山の事業所様が実施されている評価指標なので、現状維持されて良かったです。
経営改善計画
(厚労省HPより引用)
今回の改定で新設された評価指標ですが、経営改善計画を提出期限までに提出していなかった場合、-50点となるようです。
-50点はダメージが大きすぎるので、必ず提出期限までに経営改善計画を提出するようにしてください。
利用者の知識及び能力向上
(厚労省HPより引用)
こちらも新しくできた評価指標ですが、どのような事が該当するのか公表されていないため、詳細は不明です。
ただ、加点できる評価指標が少ないので、なんとしても加点したいところです。
(厚労省HPより引用)
基本報酬
※利用定員20人以下
就労継続支援A型サービス費(Ⅰ)7.5:1 | ||
評価点 | 改定後(R6.4.11~) | 現行(~R6.3.31) |
---|---|---|
170点以上 | 791単位 | 724単位 |
150点以上170点未満 | 733単位 | 692単位 |
130点以上150点未満 | 701単位 | 676単位 |
105点以上130点未満 | 666単位 | 655単位 |
80点以上105点未満 | 533単位 | 527単位 |
60点以上80点未満 | 419単位 | 413単位 |
60点未満 | 325単位 | 319単位 |
スコア方式の評価指標の変更は、なかなか厳しい内容が続いていましたが、基本報酬の単価は全区分上がっています。
「労働時間」と「生産活動」の評価指標で、点数を稼げるかどうかで命運が分かれることになりそうです。
就労系障がい福祉サービスにおける横断的な改定事項
就労系障がい福祉サービスを一時的に利用する際の評価
- 一般就労中の障がい者が就労継続継続支援A型を一時的に利用する際の評価について、基本報酬を算定する際の『スコア評価項目における平均労働時間の計算』から、当該障がい者を除くこととなります。
施設外就労に関する実績報告書の提出義務の廃止等の見直し
- 自治体の事務負担軽減のため、事業所から毎月市区町村に提出していた、施設外就労に関する実績報告の提出が不要となります。
- 施設外就労の実績記録書類の作成保管義務は継続されるので、作成保管についてご注意ください。
他サービス共通の改定事項(就労継続支援A型関連抜粋)
福祉・介護職員処遇改善加算
(厚労省HPより引用)
- 令和5年度までは処分改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算に分かれていましたが、現行の各加算・各区分の要件及び加算率を組み合わせた4段階の「福祉・介護職員等処遇改善加算」に令和6年6月から1本化するとともに加算率が引き上げられます。
- 新加算(Ⅳ)が基礎となり、その加算額の1/2以上を月額賃金の改善(ベースアップ)に充てることが要件となっています。
- 現行加算では、ベースアップ等支援加算の取得は任意でしたが、新加算では必須です。
集中的支援加算
高度な専門性により地域を支援する人材(広域的支援人材)が事業所等を集中的に訪問し、適切なアセスメントと有効な支援方法の整理を共に行い環境調整を進め、支援を行った場合の評価が新設されました。
※期間は3ヶ月を限度とします。
- 広域的支援人材が訪問等した場合の評価 1000単位/回(月に4回を限度)
- 状態が悪化した者を受け入れた事業所への評価 500単位/日
- 強度行動障害に関する支援困難事例に対して助言を行い地域を支援する人材
- 発達障害者地域支援体制整備事業(発達障害者地域支援マネージャー)等での配置を想定
視覚・聴覚言語障害者支援体制加算の拡充
- 視覚、聴覚、言語機能に重度の障がいがある利用者を多く受け入れている事業所において、様々なコミュニケーション手段を持つ利用者との交流にも配慮しつつ、より手厚い支援体制をとっている事業所をさらに評価することとなりました。
本人の意向を踏まえたサービス提供(同性介助)
- 本人の意思に反する異性介助がなされないよう、サービス管理責任者等がサービスの提供に関する本人の意向を把握するとともに、本人の意向を踏まえたサービス提供体制の確保に努めることとなりました。
障がい者虐待防止の推進
虐待防止措置減算【新設】
令和4年度から義務化された障害者虐待防止措置を未実施の障害福祉サービス事業所等に対して、基本報酬を1%減算することになりました
次の1~3が1つでもできていない場合は、減算となります。
- 虐待防止委員会を定期的に開催し、その結果を全職員に周知徹底する。
- 全職員に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施する。
- 上記措置を適切に実施するための担当者を置く。
その他、虐待防止委員会(身体拘束適正化委員会を含む)において、外部の第三者や専門家の活用に努めることや、都道府県の実施する虐待防止研修を管理者及び虐待防止責任者が受講することが望ましいとされています。
身体拘束適正化の推進
身体拘束等の適正化を図る観点から、減算額が引き上げられました。
現行では、基準を満たしていない場合に、1日につき5単位にを計算することとなっていましたが、改定後は基準を満たしていない場合に、基本報酬の1%を減算することとなりました。
➡ 虐待防止・身体拘束適正化について ~令和6年度法主改定対応~
個別支援計画の共有
- 指定基準において、各サービスの個別支援計画について、指定特定(障害児)相談支援事業所にも交付することが義務付けられました。
障がい者の意思決定を推進するための方策
- 相談支援専門員やサービス管理責任者が行う「サービス担当者会議」「個別支援会議」について、利用者本人が参加するものとし、当該利用者の生活に対する意向等を改めて確認することとされました。
高次脳機能障害者支援体制加算【新設】 41単位/日
次の1~3の要件を満たした場合、加算を算定することができます。
- 高次脳機能障害を有する利用者が全体の30%以上
- 高次脳機能障害者支援者養成研修を修了した従業者を50:1以上配置
- その旨を公表する
人員基準における両立支援への配慮
「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業所が設ける短時間勤務制度を利用する場合にも、週30時間以上の勤務で「常勤」として取り扱うことが認められます。
管理者の働き方について
- 一定の条件を満たした場合、管理者は同一敷地内等に限らず、同一事業者によって設置される他の事業所等の管理者または従業者として勤務できるようになります。
- 管理者のテレワークについての取り扱いが示され、一定の条件を満たした場合テレワーク可能となります。
業務継続計画未作成減算【新設】
以下の基準を満たしていない場合は、所定単位数の1%を減算されます。
ただし、令和7年3月31日までは、「感染症の予防及び蔓延防止のための指針の整備」及び「非常災害対策計画」の策定を行っている場合は、減算されません。
遅くとも、令和7年4月1日までには、BCP計画を策定して、必要な措置を講じる必要があります。
- 感染症や非常災害の発生時において、利用者に対するサービスの提供を継続的に実施するため及び早期の業務再開を図るための計画(業務継続計画)を策定する。
- 業務継続計画に従い必要な措置を講じる。
情報公表未報告減算【新設】 5%減算
障害者総合支援法第76条の3の規定に基づく情報公表にかかる報告がされていない場合、所定単位数を減算する規定が新設されました。
また、都道府県(指定権者)は、更新申請があった場合、申請事業者が情報公表を行っているか確認することとなりました。
WAM NET への公表ができていない事業者様は忘れずにご対応ください。
食事提供体制加算の経過措置の取り扱い
令和9年3月31日まで経過措置が延長されることとなり、一部要件の見直しがされ、次の1から3全てに適合する事業所が食事体提供体制加算を算定することとなります。
- 管理栄養士(栄養士)が献立作成に関わること(外部委託可)または、栄養ケア・ステーションもしくは保健所等の管理栄養士(栄養士)が栄養面について確認した献立であること
- 利用者ごとの摂食量を記録していること
- 利用者ごとの体重や BMI を概ね6ヶ月に1回記録していること
その他令和6年4月から義務化される事項
感染症対策の強化にかかる取り組み
- 感染対策委員会の設置と委員会の定期開催
- 委員会での検討結果を全職員に周知徹底すること
- 指針の整備
- 定期的な研修・訓練の実施
感染症・災害発生時の業務継続に向けた取り組みの強化
- BCP計画(新型コロナ・非常災害)の策定と周知
- 研修及び訓練の定期的な実施
- BCP計画の定期的な見直しと必要に応じた計画の変更
まとめ
以上が、就労継続支援 A型の令和6年度報酬改定の概要になります。
スコア方式の評価指標の内容が大きく見直され、マイナス評価が実装される等の改定がおこなわれました。
労働時間と生産活動収支でどれだけ加点できるかにかかってきますので、なんとか頑張っていただきたいと思います。
就労継続支援A型は、利用者の在宅利用や施設外就労を行っている場合、人員配置や整備すべき書類が難しくなってまいります。
当事務所では、事業所様の適正運営のために、書類点検、制度研修、委員会設置サポート、顧問契約等を行っております。
ご興味がありましたら、電話またはメールにてお問い合わせください。
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